高次脳機能障害の症状
記憶障害
記憶障害は、高次脳機能障害の症状のなかで失語症に次ぐ頻度で見られ、高次脳機能障害の代表的な症状のひとつといえます。
記憶障害を疑う現象としては、
- 病棟スタッフの名前や顔を覚えていない
- 病棟内で道に迷う(トイレに行けない)
- 一日の出来事を覚えていられない
- 当日の予定を忘れている
- 物の置き場所を忘れる
- 同じことを何度も話したり聞いたりする
などが挙げられます。
注意障害
注意障害は、やるべきことに意識を向けたり、集中することが困難となっている状態を指します。
- 注意が散漫になったり、集中力に欠ける
- まとまりのある思考や会話・行動ができなくなる
- 1つのことに固執して他に注意をうつせなくなる
- 同時に幾つかのことができなくなる
等の症状が挙げられます。
遂行機能障害
遂行機能とは、自分で計画をたて、そのための枠組みを作成し、実際に行動をおこし、結果を検証して制御・修正する能力です。
高次脳機能障害の症状のひとつとして、この機能に支障をきたす状態が遂行機能障害といわれています。
- 見通しを自分で立てられない
- 一つひとつ指示しなければ行動できない
- 自ら行動を開始しない
- 効率よく物事を進めることや物事を最後までやり遂げることができない
- 周囲を気にせず自分勝手にやってしまう
- 突然興奮したり怒りだす
等がみられます。
社会的行動障害(行動と情緒の障害)
総称して「社会的行動障害」と呼ばれる症状ですが、呈する症状は多様です。
行動や情緒がコントロールできず周囲の環境と調和ができない状態がみられるとき等にこの障害が疑われます。
- 年齢よりも幼く人に頼りたがる
- 周囲の状況に無関心になる
- 感情のコントロールがうまくいかない
- 欲求が抑えられない
- 状況に適した行動がとれない
- 無気力になる
- 相手の立場や気持ちを思いやることができなくなる
等の症状が該当します。
自己認識の低下
高次脳機能障害の特徴の一つとして、「自身が障害を持っている」ということを認識できないというものがあります。
自分が高次脳機能障害であることを否定し、リハビリや治療を拒否する方もいます。
また、高次脳機能障害によりできないことや失敗することがあっても他人のせいであると考える等、冷静に自己認識ができない状態も、ひとつの症状といわれています。
失行症
運動できる体の機能が備わっているものの、日常的な動作ができなくなってしまった状態は、失行症が疑われます。
肢節運動失行・観念運動失行・観念失行・着衣失行(着衣障害)などに分類されます。
- 今まで使っていた物の使い方がわからなくなってしまう
- 箸やスプーン、歯ブラシが使えない
- ジェスチャーができない
- 指示された動作が上手くできない
- 動作がぎこちない
等といった症状がみられます。
失認症
ことばの記号を操作する機能が障害される言語障害で、具体的にことばを聞く、読む、話す、書くといった言語に関するすべての側面において、なんらかの能力の低下となってあらわれる症状です。
また、同時に計算能力にも著しい低下がみられる傾向があります。
- 話せない
- 滑らかに話しにくい
- 聞いて理解できない
- 文字が理解できない
- 書けない
- 計算できない
等が代表的な失語症の症状です。
発話面での症状
1, 喚語困難
言葉が想い出せない、あるいは想い出しにくいという症状です。これはすべての失語症に必発の症状です。
2, 流暢性の障害
話しことばがその内容は別として、健康な状態な人と同じようにスムーズに流れるタイプ(流暢型のタイプ)と、発音がたどたどしく、また発音を誤ったり修正したりといった「構音のための努力」が必要で言葉がスムーズに流れない、いわゆる「流暢性の障害」を示す非流暢性のタイプがあります。
3, 錯語
ことばが出ないのではなく間違ったことばが出てくる症状です。錯語は次の2種類があります。
- 音韻性錯語
- 「クスリ(薬)」を「ククリ」あるいは「スクリ」というように、他の音への置換や倒置など単音レベルでの誤りを示す症状。
- 語性錯語
- 「ツクエ(机)」を「イス(椅子)」と言ってしまうように、単語が丸ごと入れ替わってしまう症状。この例では目標語と意味的に関連がある語への誤りを示しているが、全くの無関連語が出てくることもある。
4, ジャーゴン(ジャルゴン)
「ささのどりかってよ」等のように、聞く側にとって意味を理解できないことばを発語する症状です。
5, 迂回表現
主として目標の名詞が出てこないために名詞を説明しようとする症状を指します。
例/「冷蔵庫」が言えなくて「お勝手でお母さんが入れるもの」と言う。
6, 文法の障害
語と語を結びつけ文のかたちにする場合にさまざまな誤りを示す症状です。
聴覚理解の症状
失語症の人は聞いたことが覚えにくい状態となります。この症状は重症度の差こそあれど失語症患者のすべてに出現する特徴といわれています。
他に、意味を理解する能力の障害もあります。「りんご」と聞いても赤いりんごのことなのか黄色いみかんのことなのか意味がはっきりしない等も、失語症における聴覚理解の症状です。
読みの理解面での症状
書いてあることばの読解能力に支障が出る状態です。
日本語の読みの特徴として、漢字と仮名という文字体系の違いによって程度が異なるケースが多くあります。
仮名は音を表記しただけの表音文字でありそれそのものに意味が関わっていないといった側面から、仮名文字が連結すると意味が把握しにくくなるようです。
一方、漢字は一つひとつの文字が意味をもっている表意文字であるため、漢字の方が理解が残りやすいといわれています。
このあたりも症状を判断する上で重要となります。
書字面での症状
失語症検査をしてみると、他の言語側面に比べて書字面の能力が低く出るのが一般的な特徴です。
非流暢型の重症患者のなかには口頭ではほとんど何も言えないが、漢字単語がいくらか書けるので書字での意思疎通ができる人もいますが、内容は限られてくることが多いです。こうした患者は逆に仮名の獲得が非常に困難であるといった傾向がみられます。
地誌障害(地誌的失認)
地誌的障害を呈する比較的限局された症状として、道順障害と街並失認が知られています。道順は方角方向距離感覚の障害として説明され、街並失認は熟知した建物の認知ができない障害です(道に迷う、目的地に行くことができない)。
道順障害
道順障害では「熟知した建物や街並を認知することはできるものの、その目印に行き当たってもどちらの方向へ行けばよいのかわからない」といった自覚症状があります。
場所や方角・位置関係などを把握することが困難であり、自宅内部の見取り図や、熟知した地域の地図を描くことができない状態です。
そのために道に迷うといわれるのがこの障害です。
街並失認
街並失認では「熟知している家屋・街並が初めて見るもののように感じ道に迷う」という自覚症状があります。
道順障害と異なり、自宅内部の見取り図や熟知した地域の地図の描写はできるが、建物や街並を認知することができないため、道をたどるうえでの指標(目印)を失ってしまう状態です。
道順障害とは別の症状によって道に迷うといわれています。
見当識障害
自身のその時点で置かれている環境を理解することができなくなった状態を指します。
- 季節や曜日、日付などが認識できない「時間の見当識障害」
- 家族や友人など周囲の人を認識できない「人物の見当識障害」
- 今いるところが認識できない「場所の見当識障害」
に分けられます。